レオナルド・ダ・ビンチを描く
Leonardo da Vinci homage



── 過去との対話としてのオマージュ作品
松田光一の作品にたびたび登場する、レオナルド・ダ・ヴィンチ作品へのオマージュは、単なる再現でも模倣でもない。それはむしろ、「歴史と現在」「普遍と個」のあいだに横たわる見えない対話を、絵画というかたちで浮かび上がらせようとする試みである。
ダ・ヴィンチの作品は、誰もが一度は目にしたことのある「視覚の記憶」として私たちの中に深く刻まれている。その普遍性をあえて参照することで、松田は、見る者の意識を「既知」と「未知」のあいだに引き込む。かつて描かれた人物のまなざしを、今この瞬間の私たちの問いかけとして再構築するのである。
特筆すべきは、松田のオマージュが写実の技巧にとどまらず、現代的な主題や人物像を積極的に織り込んでいる点だ。そこには、「もしダ・ヴィンチが現代に生きていたら、誰を、何を描くだろうか?」という逆説的な問いが潜んでいる。描かれるのは、たとえば現代に生きる女性であり、企業家であり、あるいは旅をする人である。歴史的傑作の構図に、新たな魂が吹き込まれている。
こうした制作姿勢の根底には、「時を超えて作品は対話し得る」という思想がある。過去の巨匠たちの手の中にあった技術や精神性を、現代においていかに再解釈できるか。松田のオマージュ作品は、芸術における伝統と革新、継承と個性の関係を問うものでもある。
結果として生まれる作品は、どこか懐かしく、しかしまったく新しい。見る者に「知っているはずの像」の中に、思いがけない他者性を提示し、美術史を生きた経験として呼び起こすのである。







