松田光一の富士山の絵
このページでは2013年以降の松田光一がこれまでに描いてきた富士山の作品の中からいくつかを展示しています。
富士山とゆらぎのかたち
私にとって富士山は、ただの風景ではありません。静かに、しかし確かにそこに在りながら、見るたびに異なる表情を見せてくれるその姿は、いつも私の内側と対話を始めます。
朝もやの中にかすむ輪郭。夕陽に照らされて浮かび上がる斜面。
あるときは心の奥に滲む記憶のように、あるときは今ここに立つ証として。
同じ山であって、決して同じではない富士が、私の前に現れては消えていきます。
私は、何度も富士を描くことで、それがただ“在るもの”ではなく、出会うたびに意味を変え、かたちを変えて立ち上がる“ゆらぎの存在”であることを確かめているのかもしれません。見る者の心が触れたとき、風景はふと輪郭を持つ。
絵を描くとは、その一瞬をすくい取る行為。
私のキャンバスには、私がその瞬間に出会った“富士”の姿が、そっと刻まれています。
富士山を描くことは、風景をなぞることではなく、“存在とは何か”を静かに問いかける時間でもあります。
その先に浮かぶものは、過去とも未来ともつかない、揺れながら在り続ける、もうひとつの世界かもしれません。
