2024年に登録された世界遺産より
第46回世界遺産委員会は、2024年7月21~31日にインドのニューデリーで、開催された。当初会場は2023年9月に完成した新国際会議場ヤショブミが使われる予定であったが、最終的に国際展示コンベンションセンターのバーラト・マンダパムとなった。今委員会では日本が推薦した佐渡島の金山(新潟県佐渡市)の登録もあり、緊急案件を含む24件(文化遺産19、自然遺産4、複合遺産1)が新規登録され、世界遺産の総数は1223件となった。
Melka Kunture and Balchit: Archaeological and Palaeontological Sites in the Highland Area of Ethiopia
Ethiopia
「メルカ・クントゥレとバルチット:エチオピア高地の考古学・古生物学遺跡」(Melka Kunture and Balchit: Archaeological and Palaeontological Sites in the Highland Area of Ethiopia)は、2024年に世界遺産に登録されました。この遺跡群は約200万年前から人類が活動した場所で、石器や動物化石、人類の骨などが出土しています。特にホモ・エレクトスやホモ・サピエンスの痕跡が見つかり、人類の進化と文化的発展を理解するうえで極めて重要です。エチオピア高地の独自の環境適応や技術革新を示す重要な証拠が保存されています。
Hegmataneh
Iran
「ヘグマタネ」は2024年に世界遺産に登録されました。この遺跡は、イランのハマダーン州に位置し、古代メディア王国の首都エクバタナとしての歴史的意義を持っています。その後、アケメネス朝やパルティア朝でも重要な政治的・文化的中心地となりました。発掘調査では城壁や宮殿跡、宗教施設、居住区などが発見されており、古代イランの高度な都市計画や建築技術を示しています。ヘグマタネは、古代イラン高原における歴史と文化の重要な証拠を提供する貴重な遺産です。
Human Rights, Liberation and Reconciliation- Nelson Mandela Legacy Sites
South Africa
「人権、解放と和解 ― ネルソン・マンデラの遺産地」は、南アフリカにおけるアパルトヘイト時代の闘争とその後の和解の象徴的な場所群で、2024年に世界遺産に登録されました。ネルソン・マンデラの生誕地や政治活動の拠点、収監されたロベン島などが含まれ、彼の生涯と南アフリカの人権運動の歴史を物語ります。これらの場所は、自由と平等を求めた闘争、和解と平和への道のりを象徴する重要な遺産として評価されています。
Frontiers of the Roman Empire – Dacia
Romania
「ローマ帝国の国境 – ダキアの防衛施設」は、ルーマニアにある古代ローマ帝国の北東部国境防衛線で、2023年に世界遺産に登録されました。この遺産は、トラヤヌス帝によるダキア征服後(106年)のローマ統治時代に築かれた防衛システムを示しています。要塞、砦、監視塔が含まれ、戦略的に配置されたこれらの施設は、ローマ軍の軍事技術や帝国の広大な支配範囲を物語ります。この防衛線は、ローマ帝国の北方国境の統制と文化的影響の象徴です。
Beijing Central Axis- A Building Ensemble Exhibiting the Ideal Order of the Chinese Capital
China
「北京の中央軸線―中国首都の理想的秩序を示す建築群」は、2024年に世界遺産に登録されました。この軸線は、北京市内を南北に貫く中心軸で、13世紀の元朝時代に整備され、その後明・清時代に発展しました。故宮、天安門、天壇、鐘楼、鼓楼などの重要建築物が含まれ、都市計画と建築が一体化したデザインが特徴です。この軸線は、風水思想と儒教的な秩序を反映し、中国の伝統的な都市設計と権力構造を象徴しています。
Brâncuși Monumental Ensemble of Târgu Jiu
Romania
「タルグ・ジウのブランクーシ記念建造物群」は、ルーマニアの彫刻家コンスタンティン・ブランクーシが手掛けた野外彫刻群で、1930年代に第一次世界大戦の犠牲者を記念して制作されました。2024年に世界遺産に登録されています。この建造物群は、「無限の柱」、「沈黙のテーブル」、「キスの門」という3つの彫刻で構成され、シンプルで抽象的なデザインが特徴です。これらは、犠牲、記憶、再生の象徴であり、モダニズム彫刻の革新と精神性を反映しています。ブランクーシの芸術的遺産を示す代表的な作品群です。
Umm Al-Jimāl
Jordan
「ウム・アル=ジマール」は、ヨルダン北部に位置する古代遺跡で、2024年に世界遺産に登録されました。この遺跡は、ローマ、ビザンチン、初期イスラム時代の重要な交易拠点であり、特に玄武岩を使用した独特の建築が特徴です。住宅、教会、貯水システム、塔などが含まれ、乾燥地帯での巧みな水利用技術が見られます。ウム・アル=ジマールは、砂漠地帯における持続可能な都市計画と多文化の融合を象徴する遺産で、交易と文化の交差点としての歴史的重要性を示しています。
The Archaeological Heritage of Niah National Park’s Caves Complex
Malaysia
「ニア国立公園の洞窟群の考古学的遺産」(The Archaeological Heritage of Niah National Park’s Caves Complex)は、マレーシア・サラワク州に位置し、2024年に世界遺産に登録されました。この遺産は、人類の最古の居住地の一つとして知られ、約4万年前の遺物や人骨が発見されています。ニア洞窟群は、先史時代からの人類の生活、道具の使用、埋葬の痕跡を示す重要な考古学的証拠を提供します。また、洞窟内の岩絵や動植物の化石は、当時の環境と文化を理解する上で貴重です。人類の進化と文化の形成を物語る重要な遺産とされています。
Cultural Landscape of Kenozero Lake
Russian Federation
「ケノゼロ湖の文化的景観」は、ロシア北西部のアルハンゲリスク州に位置し、豊かな自然と人間の活動が調和した文化的景観です。ケノゼロ湖周辺の村々では、伝統的な木造建築や教会が保存され、地域の文化的アイデンティティが保たれています。また、宗教儀式や農業、漁業など、古代からの生活様式が今も続いています。美しい湖や森林の景観とともに、歴史的な文化遺産が評価され、地域の伝統文化の象徴として保護されています。
Saint Hilarion Monastery/ Tell Umm Amer
State of Palestine
「セント・ヒラリオン修道院/テル・ウム遺跡」は、パレスチナにある初期ビザンティン時代の重要な宗教遺跡で、2024年に世界遺産に登録されました。セント・ヒラリオン修道院は、4世紀に設立され、中東地域で最も古い修道院の一つです。テル・ウム遺跡は、古代から中世にかけての連続的な居住跡が見られる考古学的な重要地点で、複雑な建築と宗教的意義が評価されています。この遺産は、地域の宗教史と文化の発展を象徴しています。
Sado Island Gold Mines
Japan
「佐渡島の金山」は、日本の新潟県に位置する歴史的な金鉱山です。江戸時代から昭和時代にかけて、日本最大級の金生産地として栄えました。この遺産には、多くの坑道、精錬所、労働者の住居跡などが含まれており、当時の鉱山技術や労働環境を示しています。特に、相川金山や大間港の遺構は、金の採掘から精錬、輸送に至る一連の過程を物語っています。佐渡島の金山は、日本の産業史や経済史における重要な役割を果たし、その文化的価値が認められています。
Schwerin Residence Ensemble
Germany
シュヴェリーン宮殿群は、ドイツのメクレンブルク=フォアポンメルン州にあり、2024年にユネスコの世界遺産に登録されました。この遺産は、シュヴェリーン宮殿を中心に、庭園や歴史的建築物が含まれる壮大な建築群です。宮殿はゴシック、バロック、ルネサンスなど多様な建築様式が融合しており、中世から続く貴族の居城としての歴史があります。周囲の庭園や湖は自然と調和し、美しい景観を提供します。シュヴェリーン宮殿群は、その建築的価値と歴史的重要性から高く評価されています。
Lençóis Maranhenses National Park
Brazil
レンソイス・マラニェンセス国立公園は、ブラジル北東部に位置する広大な砂丘地帯で、2024年に世界遺産に登録されました。白い砂丘が広がる景観が特徴で、雨季には砂丘の間に青や緑のラグーンが出現し、独特の美しさを見せます。この地域は、砂漠のように見える一方で、豊かな生態系を持ち、砂丘とラグーンが織り成す景観は、訪れる人々に神秘的な自然の驚異を体験させます。
登録範囲の拡張物件
Moravian Church Settlements
Denmark Germany United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland United States of America
「モラヴィア教会の入植地群」は、デンマーク、ドイツ、イギリス、アメリカ合衆国にまたがる18~19世紀のキリスト教モラヴィア教会の計画都市群で、2024年に世界遺産に登録されました。これらの入植地は、宗教的共同体の理念に基づき、社会的平等、教育、福祉を重視して設計されました。シンプルで機能的な建築様式や公共空間の配置が特徴で、教会、学校、作業場、住居が調和した形で配置されています。これらは、信仰に基づく生活と共同体の理想を示す重要な文化的遺産です。
2024年に登録された世界遺産一覧