Tongariro National Park (New Zealand)

Tongariro National Park
(New Zealand)

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Photo : Koichi Matsuda©

0015-1_トンガリロ国立公園_ニュージーランド Tongariro National Park New Zealand Oceania
オセアニア mixed 複合遺産 ー (vi)(vii)(viii) S39 17 27 E175 33 44 1990 1993 1990,1993, 79,596 ha Ref: 421bis 最高峰ルアペフ山(2,797 m)や、富士山に似た稜線を持つナウルホエ山(2,291 m)などの活火山や死火山が広がる。トンガリロ山(1,967 m)には,エメラルド色に輝く火山湖がある。マオリ族の文化との結びつきが考慮され、文化と自然の複合遺産として世界遺産に登録された。 活火山と死火山の織り成す景観 “最高峰ルアペフ山(2,797 m)や、富士山に似た稜線を持つナウルホエ山(2,291 m)などの活火山や死火山が広がる795km2の広さを持つ。トンガリロ山(1,967 m)には,エメラルド色に輝く火山湖がある。これらの山を縦走するコースは、トンガリロ・クロッシングと呼ばれ、人気が高い。また、この国立公園の山域はマオリ族の信仰対象でもあった。マオリ族の文化との結びつきが考慮され、文化と自然の複合遺産として世界遺産に登録された。
(WIKIPEDIAより抜粋)
UNESCO

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2014年2月21日 トンガリロドライブ

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雨時々晴れのニュージーランド。この場所に来るのは今回が初めてで、
目的は2つだった。
もちろん世界遺産を感じ、描くこと、そしてもうひとつは
生き方の師匠、四角大輔さんに会うことだ。
ニュージーランドのサマーシーズンは12月〜2月くらい。
もう数日で3月になってしまう今年は今しかチャンスがない!
ということで、時期、予算的に少し厳しい感じだったけれど、
赴く感情には勝つことができず、今回もまた、貯金を断念する。

成田から乗った飛行機の隣の席は学生のマリさんだった。
彼女はオークランドに2度目のホームステイに行くのだそうだ。
ニュージーランドに長期間滞在できるなんてとってもうらやましい。。。
11時間のフライトを経てオークランド空港に足を降ろした。

aceレンタカーというところを予約しておいたのだが、
空港のレンタカーの並びにその会社はなかった。
aceレンタカーは他のレンタカー会社と比較して、
半分くらいの値段の車を貸している会社だ。
空港のサービスカウンターでaceレンタカーはどこかを訪ねると、
電話をして近くまで呼ぶシステムであることを
教えてくれた。公衆電話で電話をすると5分後に近くの出口までピックアップに来てくれた。
いつものことだけれど、初めての国と空港だと、システムや距離感を把握するのにすこし
時間を要する。さすがになれてきたとは言え、HartsやDoller以外のレンタカー屋さんで
車を借りるのは多少なりともドキドキする。

「当てても当てられても1600ドル」というおどしにもびくつきながらも
かたくなに一日10ドルの保険に入るのを断って、
無事に車を借りることができた。
この日はこのままトンガリロ国立公園まで車を走らせる。

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2014年2月22日 

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トンガリロ国立公園まではオークランドから5〜6時間くらいだっただろうか。
基本的に100キロ制限の道のりをひたすら走った。
ちなみに僕は無類のドライブ好きである。

ガソリンスタンドでガソリンを入れる時、
有人のガソリンスタンドの場合、先にガソリンを入れてから
お金を支払いに行く。この順番には少し驚いた。
他の国の文化だったら、そのままガソリンを入れてお金を払わずに
去って行く人が続出しそうだ。
こんなところからもほのぼのした気持ちになって楽しかった。
翌日にトンガリロアルパインクロッシングに挑戦する予定だったので、
この日はその出発口のポイントに寄ってみることにした。

入り口にはマレーシアから来たという3人組の男の子達がいた。
旅行情報誌のアルパイントレッキングの写真には半ズボンの男性が映っていて
僕の中ではこのコースはお気軽なハイキングになると想像していた。
その想像よりもこの三人組はかなりストイックな山登りを終えたかのような雰囲気になっていた。

3人にどこが最高だったのかを訪ねると、
「エメラロドレイクも素晴らしかった」
「ブルーレイクはもっとも印象に残っている」
「人生の中で絶対に行っておくべき場所だ」
「湖までの往復で8時間だね」
とのことだった。
これを聞いて僕は「ブルーレイク」という場所を絵に描こうと思った。
そして往復8時間という情報を聞いて、
帰ってきてゆっくりできる時間、明日は6時から登り始めようと決めた。

僕は料理ができず、レストランもしまっているようだったので、
事前に買っておいたポテトチップスとコーラを飲んですごした。
インターネットは5ドルで700MBまでの使用制限付きだ。
インターネット代金が結構かさむ旅となりそうだ。

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2014年2月23日

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この日は朝6時に起床した。
このくらいの時間に日の出を迎える時期なので、
あたりはまだまだほんのり暗い。
そしてこの日はあいにくの曇りだった。
車をトレッキングの入り口まで走らせる。
既に3台ほど車が停車している。
曇りとは行っても時折雲間から青空が見えるようなうっすらとした
曇りだった。だけど、山に囲まれた道のようになっていて、
霧があたりに立ちこめていた。
トレッキングをスタートしたのは午前7過ぎ。
昨日の情報が正しくて、順等にトレッキングできれば、
15時には駐車場に戻って来れるはずだ。

片道4時間、20km弱の道のり。
今回はキリマンジャロとは違っておき楽な旅になる予定だったので、
ブーツも普段東京ではいているお気に入りのブッテロ。
この冬に買ったばかりのピカピカの靴だ。
だけど、この後、この靴がとんでもないことになってしまう。

1〜2時間くらい歩いただろうか。
霧はまだ辺りに立ちこめている。
時折太陽が出るけれど、すぐに隠れてしまうような天気。
視界が悪くなってきた。
一本道をずっとまっすぐ来ているつもりだった。
けれど、なんだか急な登り坂になってきていることに気付いて来た。
風が級に強くなり、気温がぐっと落ち込んできた。
雨というか水分をたっぷり含んだ風が厳しくなってきたので、
僕はたまらず、持って来ていたダウンとカッパを羽織ることにした。
この2枚の服は今回使うことはないだろうと思っていたけれど、
念のために持って来た非常用装備だった。
ココロは夏気分でしかなかったから。

僕の前を行く人は白人の女性2人。
途中アジア系の男性が笑顔で僕を抜かして行く。
ものすごく薄着で僕と同じようなハイキング思考でやってきた男性である。
半袖、半ズボン、麦わら帽子、鞄からぶら下がったナイロン袋に入ったポテトチップス。
前進びちょびちょでかなり気温も低い中、その男性は坂をハイスピードで登っていく。
霧が立ちこめているので、すぐに薄着の男性の姿は見えなくなってしまった。

何分か登っているうちに、いよいよ風が尋常ではなくなってきた。
さっきまであったサインも見当たらず、道という道でもなくなってきた。
登りの角度もいよいよ尋常ではなくなってきた。
というか、僕のお気に入りのブーツを汚さずにこの坂を登ることはできない。
僕はこの先に湖があると信じていた。
ガイドブックはよく読まなかったけれど、
なにかを登った先にその湖があると書いていた気がした。
僕はこの坂の先に湖があると信じていた。

雲の晴れ間から遠くに先ほどの
薄着の彼の姿が見えた。
あまりの強風と低気温の中彼は四つん這いになりながら山を登っていた。
もしもこの道が正規のルートであったとしたら、
お年寄りは間違いなく参加できないだろう。
シンプルに考えたら分かりそうなことなのに、この時はこの道が間違っていることに
気付かなかった。というか、ここまで登ってきたのに、
引き換えすのが悔しかったのである。
すでにブーツは小石に埋もれて傷が入ってきていた。
キリマンジャロさながらの砂利道の山である。
これはもう完璧な山だ。

晴れ間から一瞬頂上が見えた。
「こんなの登りきらなきゃいけないルートなんて、ありえない。。。」
(間違えているのだが)

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あまりにも風が強く、寒くなってきて、
薄着の男性(シンガポール)ドイツ人の女の子2人と僕が
固まって動けなくなっていると下から半ズボンの力強い男性が登ってきて、
「今日はだめだ。コンディションが悪いから降りるよ」
といってシンガポールの薄着の男性とともに戻っていった。
僕は本当に戻りたいと思ったけれど、ドイツの2人が行く!といったので、
僕もなんとかしぶしぶギリギリ行ってみることにした。
風で足を滑らせたら転がり落ちてしまいそうな坂とコンディションだ。

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靴をぼろぼろにしながらなんとか登頂した。
頂上からの景観。僕はこの場所のクレーターをレッドクレーターだと勘違いした。
レッドクレーターの近くに湖があるからだ。
(もちろんこの先に湖はない。)

「私たちは山登りしていたの。湖は普通のコースに戻らないと」
僕は愕然とした。強風で会話が成り立っていなかったせいで、
頂上に辿り着いた今、ようやくこの会話をすることができた。
この山の上に湖はない。
僕たちは山を下ることにした。
彼女達のブーツは登山用のしっかりしたハイカット。
滑るように山を降りて行く。
僕の靴はお気に入りのシティブーツ。
もちろん小石がじゃんじゃん入って来る。
足がいたくてまったく進めない。
体力は登りでつかいきっていた。
ハイキングというテンションだったので、弁当もない。
お腹がすいて、風もものすごくつよくて、寒くて、足がめっちゃいたくて、
一人で泣きそうになったが、時間がなくなって、湖が見られない、描けないなんて
もっと最悪なので、
4分の1くらい残った昨日のポテトチップスを胃袋に流し込んで
さけんだ。
「ブーツが傷だらけでなんぼのもんじゃー」

この時に登頂した山はトンガリロ国立公園に3つある山のうち、
2番目の山「ナウルホエ」という山だった。

ちなみにこの山を登るとアルパインクロッシングを制覇するのは難しい。
10時間以上かかったけれど、湖までの往復はできた。
(しんどいので全くおすすめできない)

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気付くと通所のアルパインコースに戻って歩いていた。
水もあとわずかしかない。
どれくらいあるいただろう。
また山のような登りが現れる。

強風に耐えきれず、看板に隠れる人たち。
この日は本当に台風以上の強風が吹き荒れていた。
この強風、文章や写真ではまったく伝わらないけど、
台風でも体感できない突風。
湖手前の丘の上では本当にいつ崖に突き落とされてもおかしくないような風だった。

この通常のコースだけでも結構ハードなトレッキングコースだった。
特に、僕は湖までの往復コースだったので、
山を超えて下った所にある湖を見て、そこから引き返す時の登りが最も
きつく感じた。この時にしっかりとしたマウンテンブーツを履いていれば余裕だったかもしれない。
僕のブーツはこの時すでに傷だらけのスーパーカジュアルブーツに変身していた。
ブーツさんごめんなさい。。。

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湖付近にあるレッドクレーター。
「実際に赤いんやあ」といいつつ。
写真ではまるで伝わらないけれど、
強風で飛ばされて飲み込まれそうな雰囲気で怖かった。

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手前の3つがエメラルド湖、左奥のものすごく大きいのがブルー湖。

  • 体力と時間がなくなり、ブルー湖までは辿り着けなかった。

これまでに出会った中で最も美しい湖だった。
「最高やん。。。」

完全にラストのトレッカーになっていた。
それでも21時くらいまでは明るいニュージーランド。
激しい空腹を乗り越えて無事に出発点まで辿り着いたころ、
時間は1830頃だったと思う。
11時間くらい歩くとやっぱりものすごく疲れるものである。
入り口の所でアジア系女性が顔を青くして、
「旦那と6歳くらいの子供の2人連れを見ませんでしたか?」と訪ねてきた。
見ていないことを伝えると、僕が登ったナウルホエに今日登りに行ったという。
あの強風の中6歳。。。
心配しているとその二人がちょうど戻ってきてほっとした。

山登り、自然と戦う時は棄権することも本当に勇気だと思った。
怪我をしたり、死んだりしたら、ライフワークもなにもない。

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帰り道に霧が晴れて全貌があらわになったナウルホエ。
この山をさっき登りきったとは。。。
(道を間違えて。どこまでどじっこなのだろう。。。)

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霧が晴れてはっきりと見えたエメラルド湖。
僕はこの三番目の湖がブルー湖がブルー湖だと思い込んで
「今しかない!」という感じでペンを走らせた。
けれど、このあと完全に霧が晴れて、
ものすごく遠くに見えるものすごく大きな丸い湖があった。
それがブルー湖だった。。。

天候がよければ起こらない現象。自然にはかないません。

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トンガリロ国立公園の3つの山。
左から
マウント・トンガリロ(1967m)
マウント・ナウルホエ(2287m)
マウント・ルアペフ(2797m)

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