2014年2月23日
この日は朝6時に起床した。
このくらいの時間に日の出を迎える時期なので、
あたりはまだまだほんのり暗い。
そしてこの日はあいにくの曇りだった。
車をトレッキングの入り口まで走らせる。
既に3台ほど車が停車している。
曇りとは行っても時折雲間から青空が見えるようなうっすらとした
曇りだった。だけど、山に囲まれた道のようになっていて、
霧があたりに立ちこめていた。
トレッキングをスタートしたのは午前7過ぎ。
昨日の情報が正しくて、順等にトレッキングできれば、
15時には駐車場に戻って来れるはずだ。
片道4時間、20km弱の道のり。
今回はキリマンジャロとは違っておき楽な旅になる予定だったので、
ブーツも普段東京ではいているお気に入りのブッテロ。
この冬に買ったばかりのピカピカの靴だ。
だけど、この後、この靴がとんでもないことになってしまう。
1〜2時間くらい歩いただろうか。
霧はまだ辺りに立ちこめている。
時折太陽が出るけれど、すぐに隠れてしまうような天気。
視界が悪くなってきた。
一本道をずっとまっすぐ来ているつもりだった。
けれど、なんだか急な登り坂になってきていることに気付いて来た。
風が級に強くなり、気温がぐっと落ち込んできた。
雨というか水分をたっぷり含んだ風が厳しくなってきたので、
僕はたまらず、持って来ていたダウンとカッパを羽織ることにした。
この2枚の服は今回使うことはないだろうと思っていたけれど、
念のために持って来た非常用装備だった。
ココロは夏気分でしかなかったから。
僕の前を行く人は白人の女性2人。
途中アジア系の男性が笑顔で僕を抜かして行く。
ものすごく薄着で僕と同じようなハイキング思考でやってきた男性である。
半袖、半ズボン、麦わら帽子、鞄からぶら下がったナイロン袋に入ったポテトチップス。
前進びちょびちょでかなり気温も低い中、その男性は坂をハイスピードで登っていく。
霧が立ちこめているので、すぐに薄着の男性の姿は見えなくなってしまった。
何分か登っているうちに、いよいよ風が尋常ではなくなってきた。
さっきまであったサインも見当たらず、道という道でもなくなってきた。
登りの角度もいよいよ尋常ではなくなってきた。
というか、僕のお気に入りのブーツを汚さずにこの坂を登ることはできない。
僕はこの先に湖があると信じていた。
ガイドブックはよく読まなかったけれど、
なにかを登った先にその湖があると書いていた気がした。
僕はこの坂の先に湖があると信じていた。
雲の晴れ間から遠くに先ほどの
薄着の彼の姿が見えた。
あまりの強風と低気温の中彼は四つん這いになりながら山を登っていた。
もしもこの道が正規のルートであったとしたら、
お年寄りは間違いなく参加できないだろう。
シンプルに考えたら分かりそうなことなのに、この時はこの道が間違っていることに
気付かなかった。というか、ここまで登ってきたのに、
引き換えすのが悔しかったのである。
すでにブーツは小石に埋もれて傷が入ってきていた。
キリマンジャロさながらの砂利道の山である。
これはもう完璧な山だ。
晴れ間から一瞬頂上が見えた。
「こんなの登りきらなきゃいけないルートなんて、ありえない。。。」
(間違えているのだが)
あまりにも風が強く、寒くなってきて、
薄着の男性(シンガポール)ドイツ人の女の子2人と僕が
固まって動けなくなっていると下から半ズボンの力強い男性が登ってきて、
「今日はだめだ。コンディションが悪いから降りるよ」
といってシンガポールの薄着の男性とともに戻っていった。
僕は本当に戻りたいと思ったけれど、ドイツの2人が行く!といったので、
僕もなんとかしぶしぶギリギリ行ってみることにした。
風で足を滑らせたら転がり落ちてしまいそうな坂とコンディションだ。
靴をぼろぼろにしながらなんとか登頂した。
頂上からの景観。僕はこの場所のクレーターをレッドクレーターだと勘違いした。
レッドクレーターの近くに湖があるからだ。
(もちろんこの先に湖はない。)
「私たちは山登りしていたの。湖は普通のコースに戻らないと」
僕は愕然とした。強風で会話が成り立っていなかったせいで、
頂上に辿り着いた今、ようやくこの会話をすることができた。
この山の上に湖はない。
僕たちは山を下ることにした。
彼女達のブーツは登山用のしっかりしたハイカット。
滑るように山を降りて行く。
僕の靴はお気に入りのシティブーツ。
もちろん小石がじゃんじゃん入って来る。
足がいたくてまったく進めない。
体力は登りでつかいきっていた。
ハイキングというテンションだったので、弁当もない。
お腹がすいて、風もものすごくつよくて、寒くて、足がめっちゃいたくて、
一人で泣きそうになったが、時間がなくなって、湖が見られない、描けないなんて
もっと最悪なので、
4分の1くらい残った昨日のポテトチップスを胃袋に流し込んで
さけんだ。
「ブーツが傷だらけでなんぼのもんじゃー」
この時に登頂した山はトンガリロ国立公園に3つある山のうち、
2番目の山「ナウルホエ」という山だった。
ちなみにこの山を登るとアルパインクロッシングを制覇するのは難しい。
10時間以上かかったけれど、湖までの往復はできた。
(しんどいので全くおすすめできない) |